NPO法人eboard(以下、eboard)は、「学びをあきらめない社会へ」をミッションに、ICT教材の開発・運営等様々な取り組みを行っている団体です。ebordでは2023年と2024年の2回にわたり、CRファクトリーのコミュニティキャピタル診断を受診してくれています。
今回は、eboardの代表の中村さん、事務局・吉永さんに診断を通して得た組織に関する気づきや、今後の組織運営に向けた新たな取り組みについてインタビューいたしました。
学びをあきらめない社会を目指す「NPO法人eboard」とは?
NPO法人eboardは、「学びをあきらめない社会」をミッションに、インターネットを通じて、経済的理由、不登校、障害などの事情を抱える子どもたちの学習機会の保障を目指して活動しています。
団体が開発・運営するICT教材eboardは、約2,000本の映像授業と約10,000問のデジタルドリルで構成され、公立学校・非営利活動、ご家庭での利用(個人)には無料で提供しています。
全国の公立学校や学習支援団体、フリースクール、地方の公営塾など10,000カ所以上の教育現場で導入され、毎月20〜30万人に利用されています。
>>NPO法人eboardとは?
eboard教材の特徴
- 勉強が苦手な子も分かりやすい!ていねいな映像授業
映像授業は7〜8分とコンパクトに、親しみやすい口調で丁寧に解説しています - 基礎から1つずつ進むデジタルドリル
基礎レベルからの問題で1つずつ確認。動画との連動性で疑問点を解決しやすく工夫しています。 - 学びやすさへの工夫
発達障害や特性に配慮した映像授業のコンテンツが充実しています。
eboardの教材は、特に3番目の「学びやすさへの工夫」に注力しています。
2024年春には発達障害などにより学びにくさを抱える子へのサポートを目的とし、「ぴったり設定」機能をリリースされています。
学びにくさを抱える子に寄り添う「ぴったり設定」機能をリリース
デジタルドリルのふりがなの有無、映像授業(動画)の字幕の有無や再生速度を、一人ひとりの特性や学び方に合わせることが可能になりました。
その他にも様々な取り組みを行っており、最新の取り組みについてはこちらをご覧ください。
生成AIを活用した教育現場での「やさしい日本語」の活用実証
今回インタビューにご協力いただいたお二人をご紹介
コミュニティキャピタル診断を通じて見えたeboardの組織の強み
コミュニティキャピタル診断の結果、eboardは3因子の数字が全体的に非常に高く、特に第1因子「理念共感と貢献意欲」の数字から、スタッフ全員が団体のミッションに強く共感していることが明らかになりました。
代表の中村さんは「eboardは、事業も組織もすべてミッションに従属する」という考え方を掲げています。組織のすべての活動がミッションに基づいているため、スタッフが自然とミッションについて深く思考し、日々の業務に高い意欲を持って取り組んでいることが、診断結果からも浮き彫りになりました。
さらにスタッフの高い貢献意欲を支えている要因の一つとして、四半期に一度行われる、スタッフと代表との1on1ミーティングの存在が挙げられます。
中村さんは、「1on1にて出た話はなるべく早く団体としての動きにつなげるようにしている。四半期に一度団体の代表と話をすることにはちゃんと意味があると実感してほしい」と語っています。
自身の感じていることが団体の課題として実際に代表に取り上げられ、具現化されていくことを実感すると、スタッフ自身も自分の発言には意味があると認識できます。自分の発言によって団体が動くことによって、団体そのものやミッションのために自分が何をするべきか深く考えるようになります。
eboardの圧倒的な「理念共感・貢献意欲」の背景には、スタッフと真摯に向き合う代表の思いと、それが実現される仕組みが存在していることが分かりました。
eboardの組織文化:フルリモートと多様な人材が育む助け合いの精神
eboardの組織の特徴としては、フルリモートを導入しており、全国から多様なバックグラウンドを持つ人材が参画しています。
通常であれば、リモートワークならではのコミュニケーションの課題や孤独感が浮上し、活動において意思の共有が図りづらかったり、居心地の良さを感じることが難しい団体も数多くあると思います。
しかし、eboardでは逆の現象が起きています。
ここ数年でスタッフ数が増加し、働き方も多様化する中で、急な休みや家庭の事情などによって業務に影響が出そうな日も少なくありませんでした。また、フルリモートで柔軟に働ける職場でなければ、仕事を続けるのが難しいスタッフも多くいます。そんな状況でも、スタッフ同士が互いの事情を理解し合い、カバーし合うことで、ミッションの達成に一層近づけるという意識が、団体全体に根付いています。
コミュニティキャピタル診断の結果では第1因子から第3因子まで非常に高い点数を出していますが、ミッション達成に向けたスタッフ同士の連携力が支えているのかもしれません。団体としてのゴールを一人ひとりが理解し、進んでいくことのできるチーム力こそがeboardの強みであり、診断結果に良い影響を与えたと考えられます。
試行錯誤を経て得た学び:自分たちの風土に合う組織運営とは何か
eboardが現在の組織の強みを築くに至った背景には、数々の試行錯誤がありました。例えば、他チームとの関わりを深めるためのルールや、業務を振り返るミーティングなど、さまざまな取り組みを導入してきましたが、そのすべてが成功したわけではありません。
しかし、このような取り組みを通じて、自分たちの組織風土に合う運営方法を見つけ出し、調整を重ねてきました。うまくいかなかった取り組みを見直し、自団体にとって最適な方法を探り続けた結果、現在の「ミッションを見据えた業務への取り組み」と「ミッション達成に向けたチーム連携」「メンバー一人ひとりが主体的に活動を行う」組織が形成されたのです。
団体の運営方法は、最初からうまくいく訳ではありません。また、同じ運営方法を継続し続けるだけでも上手く行きません。
組織にとって、今何が課題となっているのか。成長のどのフェーズにいるのか等定期的に組織を見つめることが非常に重要となってくるのです。
診断を通じたバリュー策定への新たなアプローチ
eboardはこれまでミッションを中心に活動してきましたが、現在は組織としてのバリューを明確にする段階にあり、その言語化に向けてコミュニティキャピタル診断の結果を戦略的に活用しようとしています。
コミュニティキャピタル診断を通じて、メンバーのマインドセット(志向性)について新たな発見があり、これが組織のバリューを言語化する上で重要な手がかりとなることがわかりました。
中村さんは、「組織としてバリューを設定する上で、マインドセットの結果を踏まえて組織として足りない要素があれば、補っていくことのできるバリューを作っていきたい」と語っています。
これまでの診断結果も参考に、足りない部分を補完しつつ、組織全体の方向性をさらに統一するためにバリューを構築していくことを目指しています。eboardは、これまでの強みを活かし、スタッフ一人ひとりがより充実感を持って働けるよう、環境整備やサポート体制の強化にも注力していく予定です。
団体に合ったバリューの設定は、団体の強みをさらに尖らせてくれることと思います。今後も社会に大きなインパクトを与える団体として成長し続けることを期待しています!
最後に
コミュニティキャピタル診断は、NPOやソーシャルビジネスの組織が自らの強みや課題を再確認し、未来を築いていくためのツールです。eboardの事例を通じて、コミュニティキャピタル診断の活用の仕方や、組織を見つめ直すことの大切さについて、少しでも気づきがあれば幸いです。