コラム「スタッフの”5つの褒め方”」

先日「スタッフの”叱り方”」というコラムを書きましたが、今回は続編として”褒め方”について考えてみます。
そもそも、褒めるという行動の目的はなんでしょうか。一言で表せば”相手のモチベーションを高めること”なのですが、その内容に本人の自覚があるかどうかで伝え方も変わってきますね。

本人が意識してやっている行動や、自覚している長所などを褒めることには、”承認”や”背中を押す”という意味合いが強いと思います。一方、本人が無自覚な成果や成長を褒めることには”自己理解の支援”や”新たな視点の付与”といった意味合いがあります。
元々の自己評価が低く自信があまりない人の場合、後者がとても重要になります。ネガティブだった自己理解を適切な捉え方にできるように、物事の評価や周囲への影響を多角的に見ることができるように、他者からの”褒める”という行為が必要な場合があります。
その外的刺激の積み重ねで徐々に言動がポジティブになったり、表情に自信が見えるようになったりといった変化を目の前で見られるのは、メンターとしての喜びでもありますね。
さて、実際の”褒め方”を考えて棚卸ししてみると、以下のような5つに分けられるでしょうか。

(1)スキル・能力を認める
(2)成長・変化を伝える
(3)出した成果を可視化する
(4)他者への影響を共有する
(5)好意・愛情を示す

(1)スキル・能力を認める
ここには自覚的である場合が多く、褒める側としても伝え方が容易だと思います。ドキュメントやデザインといったアウトプットが明確なスキルはもちろん、他者への気遣いや思考の角度や深さといった姿勢・メンタリティにも言及できるとよりエンパワーできるでしょう。

(2)成長・変化を伝える
自分自身の成長・変化はなかなか気づきにくいものです。だからこそ、定期的に振り返りの機会を設ける、客観的に自己評価するトレーニングをする、そして他者からのフィードバックを受ける場があることが重要です。特にのめり込んでコミットしている時は短期間でも急激に変化していることがあります。
”前に進んでいる”という感覚を適切に得られることは今後の方向性の確認にもつながり、成長をさらに促進する効果もあります。

(3)出した成果を可視化する
本質的な成果(アウトカム)をチーム・経営の両方の視点で可視化することで、働きが何につながっているかが明確になり、自己効用感(役に立っているという感覚)が高まります。
自己効用感がある=やりがいを感じられる環境を提供できているかどうかはマネジメント側にとって非常に重大なテーマであり、個人のモチベーションに大きく作用します。

(4)他者への影響を共有する
成果や数字が上がることにはあまり比重を置くことができず、むしろ”誰かが喜んでくれたこと”にこそやりがいを感じるというスタッフも意外に少なくありません。その場合、たとえばチーム内の後輩の成長・変化や、イベント参加者のポジティブな声などを共有することが効果的です。特にメンターからではなく(身内のバイアスがかからない)外部の第三者からの評価が届くことは、説得力を持って自己肯定感を高めてくれます。

(5)好意・愛情を示す
能力・過程・成果という部分すべてを包括した、存在そのものの承認として、人として好意・愛情を示すということも”褒め方”のひとつだと考えています。文脈やタイミングにはもちろん適切さが必要ですが、仲間を認めるということの延長線上に、家族のように受け入れるという関係性があると実感しています。

褒めることも叱ることも、チームの中で相互に影響し合いエンパワーするための行動であることには変わりありません。
そしてチームが本当に良い状態にありエンゲージメントが高い時には、そうした働きかけがメンターから一方的に発動するのではなく、メンバー間で相互に作用しています。
自発的かつ対等に、認め合い高め合えるチームこそ、マネジメントにおいて目指すべき姿であると意識しながら、日々のコミュニケーションを丁寧に積み上げていきたいものです。

(事業部長 五井渕 利明)

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