コラム「ファシリテーションに「常の解」は無い」

こんにちは! コンサルタントの五井渕です。
今回のコラムは、すっかり用語が一般化しつつある「ファシリテーション」についてです。

ありがたいことにこれまで何度となく人前に立つ機会をいただき、セミナーや講演、ワークショップなどの経験を積んできました。
思い出すと今でも痛く恥ずかしくなるような失敗も重ねてきましたし、その場の熱量や一体感がぐっと高まるような瞬間に立ち会うこともありました。

依然未熟者ではありますが、これまでの体感を通して思うのは、場をつくる、ファシリテーションをすることに「常の解」は無い、ということです。
どんな場でも通用する、というスキルやノウハウは無いと考えています。
その日その時によって、状況や設定は常に違うものだからです。
会場、テーマ、方法、参加する人、自身のコンディションまで、完全再現が可能という場はありえません。

とは言え人前に立つ時には、場の満足度・達成値を高めるということが常にミッションとしてあります。
正解は無いながらも(主に失敗体験から学んだこととして)、そのために私が心がけていることは、大きく分けると3つになります。

◆状況や相手を見ながら常にチューニングする
場の状況は常に違ったものであると同時に、刻一刻と変化するものだと思います。それには挙げれば切りのないほどの要素が影響します。
参加者の疲れ具合、会場の温度や湿度、演者のコンディション、スタッフの振る舞い、グループメンバーの相性、休憩の長さやタイミング、発せられた言葉のひとつひとつ、などなど・・・。
あらかじめ用意された想定や進行に固執することは、結果的に満足度を損なう可能性があります。
ファシリテーターは常に高くアンテナを立て、状況の変化に向き合って対応することが求められます。
変化に慌てず、変化を楽しみながら立ち回れるようにしたいものです。

◆「自分自身」で立ち回る
状況にいくら応じようとしても、数十年積み重ねてきた自分の個性を急に根元から変えることはできません。喋り方、動き方、声質、人相。
リアルタイムで変化する多くの要素の中で、実は最も変わらないのは自分自身のキャラクターです。
無理にやりにくい振る舞いでぎこちなさを感じさせてしまうよりは、地に足をつけて自然体で立ち回ることの方が、結果的には質の高いものになると身に染みています。
特に参加者の言葉に共感を覚えた時などは、なるべくまっすぐにそれを表現するようにしています。
ポジティブな心の動きを正直に出すことは、場に良い作用を与えることになると考えているからです。

◆ゴールを見据える
この場のゴールが何なのか、ということが最も基本的で最も重要なことです。
セミナー・講演・ワークショップの型やテーマ、演者の強みやこだわりも、あくまで場を構成する要素、材料に過ぎません。他者からの評価に意識が向いてしまう時は特に危険です。
参加者の方々にどんなものを持ち帰ってもらう場なのか、というゴールを常に見失わないように心がけています。
事前にゴールを念入りに確認し、進行中も常に意識し続けることが重要だと考えています。

CRファクトリーでインターンをしてくれている学生に、時々コツを教えてほしいと言われることがあります。その度に答えています。ファシリテーションにコツなんてない、と(笑)。
正解は無く手探りだからこそ、楽しくやりがいがあるのがファシリテーションだとも感じています。
場数を踏む機会があることは貴重なことだと思い、常に真剣に場に向き合いながら、試行錯誤を続けていきたいところです。

(コンサルタント 五井渕 利明)

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