第1因子「理念共感と貢献意欲」の処方箋 ~具体的な取り組み~


第1の因子は「理念共感と貢献意欲」です。同じ集団に属する人間として、仲間と共通の目的や目標を共有し、共にそれを目指そうと思えること。「この団体の理念に共感している」「この団体を自分も一緒に担っていきたい」と思える感覚が第1の因子です。

この感覚を組織・コミュニティのメンバーがどれくらい強く感じられているか。ただ活動に参加しているだけではなく、「こういう団体にしていきたい」「こういう人たちを増やしていきたい(あるいは減らしたい)」「こういう地域・社会をつくっていきたい」という理念・ ビジョン・想いにメンバーが共感していて、「だったら私もがんばりたい!」と貢献意欲を感じていること。それが、第1因子の「理念共感と貢献意欲」です。

「何をやるか」が活動というものの具体ではありますが、そもそも「何のためにこの活動をやるのか」「誰のためにこの活動をやるのか」「この活動はどこを目指しているのか」といった上位の目的こそ、人の心を動かし活動の求心力となるものです。その重要性を再認識すると共に、それをどのように共有・浸透していけば良いのかについて考えていきましょう。

理念の共有・浸透方法

理念をどのようにしてメンバーに共有・浸透していけばよいのかについて、3つのポイントをご紹介します。

1. 理念についてメンバーと語り合う 
2. 理念を体感する・身体で覚える
3. 語り部・伝道師を育てる

1. 理念についてメンバーと語り合う
1つ目のポイントは、「理念についてメンバーと語り合う」ことです。理念はリーダーから一方的に伝えるだけではなく、メンバー同士の「対話」を通してこそ染み渡っていくものだからです。

理念共有・浸透の方法を考えるとき、よく耳にするのは、「代表に理念を語ってもらう」 「理念を壁に貼る」「ミーティングの度に理念を確認する・唱和する」「理念の動画・ムービーをつくる」などの施策です。もちろんこれらの施策はやった方が良く、理念共有・浸透の基礎を成すものになると思います。

そこに加えて視点として持っておきたいのが、この「理念についてメンバーと語り合う」 というものです。人はただ(受け身で)聞いたり読んだりするだけではなく、「発話」を通 してこそ頭が回転して、ものごとを深く理解したり印象や記憶に残るものなのです。この原理をうまく活用して、理念を読み聞かせるだけではなく、メンバーに語ってもらったり、メンバー同士で対話することによって、理念の共有・浸透を図ってみてはいかがでしょうか。

代表が総会や研修や要所要所でプレゼンするだけではなく、「理念についてみんなで語り合う場・時間」を設けることが具体的なポイントです。忙しい中で、なかなかそういう時間を取れない事情もあるかもしれませんが、理念は活動のエンジン・エネルギーなので、がんばってその機会・時間をつくりましょう。1回2時間の場を年に2回ぐらい設けられればまずは良いと思います。「理念についてみんなで考えるワークショップ」をぜひやってみてください。必要に応じて年間計画・カレンダーの中に位置づけて、意図的に時間・機会をつくり出しましょう。

理念はリーダーから一方的に伝えるだけではなく、メンバー同士の「対話」を通してこそ染み渡っていく。理念についてメンバーで語り合うことで、理念共有・浸透を進めていってください。

2. 理念を体感する・身体で覚える
2つ目のポイントは、「理念を体感する・身体で覚える」です。リーダーが理念をしっかりと言葉で伝えたり、理念についてメンバー同士で語り合うことの重要性について見てきましたが、もう1つ覚えておきたいのが、理念は「体感」によって浸透するという原理です。「言葉」には非常に大きな力が宿っていますが、一方、ここで扱う「体感」には、もしかしたら言葉以上に理念共有・浸透の効果があるかもしれません。

みなさんの団体・活動が大切にしている理念があると思います。それは、例えばですが 「多様性を認め合える社会」とか「安心して暮らせる地域」だとします。これらの言葉の響きはとても人の心をつかみ、「そういう社会や地域っていいなぁ」「自分もそういう社会や地域をつくりたいなぁ」と思わせる力があるかもしれません。「言葉」には大きな力が宿っているのです。

一方で、もしこれらの理念を「体感」できたらどうなるでしょう。「多様性を認め合える」 雰囲気の場に立ち会ったとしたら。「安心して暮らせる地域」を感じる瞬間を味わったら。「多様性を認め合えるってこういうことかぁ」「安心して暮らせる地域ってこういうことなのかぁ」としみじみと感じ入るような体感は、人に大きなインパクトをもたらします。もしかしたら、言葉以上に大きな影響力があるかもしれません。

理念体感の機会の多くは「現場」と「顧客」にあるでしょう。活動をしている現場には理念を感じられる瞬間が多くあるかもしれません(もしそうでなければ、現場のつくり方を変えなければいけないかもしれません)。そして、そこに参加しているお客さん・利用者・ユーザーとの「触れ合い」や「声」の中に理念を感じられるものがあるでしょう。

理念を感じられる現場をしっかりとつくり込むと共に、メンバーが理念を体感できるように機会や場のコーディネートをしていきましょう。それはとても大きな理念共有・浸透となり、主体意識や当事者意識や担い手意識を持ったメンバーを生み出すことにもつながります。

3. 語り部・伝道師を育てる
3つ目のポイントは、「語り部・伝道師を育てる」です。組織の中に“代表以外”のメンバーで理念を力強く語れる人がいると、理念共有・浸透は大きく進みます。代表による理念語りはとても大切ですし威力がありますが、一方で、代表一人の力・発信だけでは理念は隅々まではなかなか浸透していきません。組織のメンバー数が多くなればなるほどなおさらです。

組織の中に理念を力強く語れる語り部・伝道師を育てましょう。中間層や若手リーダー が理念の語り部になることが、理念を隅々にまで浸透していく力になります。代表とは違う身近な先輩や仲間が理念を語り始めれば、トップダウンとは違う横の力・ナナメの力が働いて、理念はスクランブルに共有・浸透されていきます。代表と同じように/代表に代わって理念を語る中間層や若手リーダーを増やしていくことが、理念共有・浸透の質を高めることになるのです。

そのためには、例えばイベントなどでの団体紹介に代表以外のメンバーを積極的に登用するなどが考えられます。団体紹介・団体説明の機会を多く持つことによって、理念を「自分の言葉」で説明できるようになっていったり、「発話」を通して理念への理解を深めることにつながります。代表以外のメンバーが団体紹介・団体説明する機会を敢えて意図的に創り出し、組織内に理念を語れる語り部・伝道師を増やしみてはいかがでしょうか。

自分のコミュニティの「理念共感と貢献意欲」を測ってみる