【イベントレポート】<スペシャルトークイベント>佐渡島庸平×小沼大地×呉哲煥 コミュニティを語る 〜活気あるコミュニティであふれた未来とは〜

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地道に同じことをずっと言い続けているのがめちゃくちゃすごい

小沼:呉さん、この5ページにあるCRファクトリーのビジョンって創業当初(2005年)から変わってないんですか?

:あーほとんど変わってないですね。

小沼:それってすごいことですよね。2023年現在に必要なことがすごい書かれている。めちゃくちゃ先進性があったように思う。

佐渡島:なんでこれつくったんですか?

:私がCRファクトリーを立ち上げた理由・背景みたいなところをそぎ落として話すと・・・10代にあまりこの人生に希望を持ててなかったというか、あんまり積極的に生きたいって思えていなかった。ちょっとだけ息苦しさもあって、生きる意味がわからないっていう10代があって。

で、大学に入った時にこのボランティアサークルに入るんだけど、それが私のコミュニティ体験としてすごく大きくて。これはもう私の物語からすると180度人生が変わるぐらい大きな転換。

進学校に行って勉強して野球部やって、一生懸命それなりにキラキラ輝く人生だったんだけど、そこを歩いている呉本人はそこまで生きたいって思える自分じゃなかった。

ところが、このコミュニティと仲間に巡り合ったことによって「生きていきたい」ってなったって、まさにここに書いてあるようなことがすごく自分の物語に起きたっていうのがかなり大きくて。

で、ちょっと単純なのだけど、もしかしたらこれは多くの人とか日本社会に必要なことなのかもしれないなって思ってからもう人生決まっちゃって、そこから20年ブレずにずっとこれをやっているって感じですね。

小沼:震災の後に語られている文脈とかコロナの後に語られている文脈にすごく近いことを、既にかなり前に呉さんが経験していて、それを社会に対して必要なものだとデザインしたっていうところにCRファクトリーが生まれた価値がすごくある。あと地道にずっと同じことを言い続けているっていうめちゃくちゃすごいところだと改めて感じました。

個人単位のエンターテインメントがコミュニティを崩壊させる

小沼:社会課題解決とコミュニティというところで話をさせていただきたいのですけど、皆さん、この本ご存じですか?「ボウリングアローン」っていう本で、日本語だと「孤独なボウリング」っていう本です。凶器になりそうなくらいの分厚さの本で、この本は我が家では、飼っているカブトムシが脱走しないための重しになってて、読んでなかったんですけど(笑)。

小沼:この本を一緒に読んでくれそうな奇特な人(呉さん)がいるなって思って、呉さんと一緒に夜な夜なこの本を読もうっていうので、この本を読破するっていうのをやりました。それがご縁で今日呼んでいただいたんじゃないかなって思っています。

どんな本かというと、アメリカでコミュニティがどんどん希薄化するっていうことが、日本での文脈より先に起きていて、最終的に象徴的な出来事としてアメリカでのコミュニティ行事であるボウリングが一人で行われている、と。

みんなで地域で集まって、地縁、会社、様々なコミュニティで集まって無駄話しながら、わけわかんないボウリングって活動に興じる、これがコミュニティの豊かさっていうものをつくってきた。ところが最近ボウリングを一人でやっている。だからボウリングアローンっていう本で、この本が結構世界的にセンセーショナルに取り上げられ、これからコミュニティやべえなって言われた。

佐渡島:あれですね、日本でもカラオケ一人でやる人が増えているのと似ている感じですね。

小沼:そうです。一人カラオケっていうのもそうですし、個食だとか、ゲームだとかも含めて、個別的なエンターテイメントが流行っていった歴史と地域コミュニティが弱体化しちゃったという歴史があって。地域コミュニティの崩壊の犯人は誰なのかみたいなのがミステリー小説的に書いてある、そんな本です。

佐渡島:消費者として個が単位のほうがいろんなものが売れるじゃないですか。だからやっぱ資本主義を駆動しようとすると消費者が増えたほうがいいから、家族としての欲望よりも個々人としての欲望を強くする。例えば、「地域にお風呂あった方がいいな」ってみんなが思うのと、「家にお風呂あった方がいいな」と思うのとで結構違ってくる。欲望が個人単位で起きて、嫉妬が掻き立てられる。資本主義を中心としすぎてる社会だとそういうことがすごく起きていて。

小沼:映画館に行くって、複数人で行くエンターテイメントだったところが、テレビというものに駆逐されていく。やっぱりこう個人を消費者としてターゲットしたサービスが拡充することによって資本主義がコミュニティでの活動ってものをリプレースしていくっていう動きがガンガンある。

最後の犯人が、世代の価値観が犯人だっていう話。次に生まれてきた人がやっぱり便利さとか個人としての幸せってものを希求する層が多いと、そこが消費者のマーケットトレンドになるので、そこに対してのものが入ってくる。

なので、もう20年前の本なんで彼は達成できなかったんですけど、彼が言っているのは次の世代はもう1回揺り戻って、コミュニティの側に価値が置かれる時代になるんじゃないかって言っている。

:私はコミュニティを作ろうと思って、コミュニティ体験をしたいと思って大学のサークル入ったわけじゃなくて、たまたま誘われてサークルに入った。なんかその社会環境としてある程度用意されていることと、あとは本人がそれを必要に応じて選び取ることの、なんか両方の作用がありそうだなっていうのを今ちょっと聞いていて思いましたね。

無駄話をするシュムーザーが大切

佐渡島:でも、だから今日ね、呉さんが僕らの予定を押さえてなんかちょっと真面目な感じでやっているじゃないですか。価値を出さなきゃなってすごく思っちゃってるじゃないですか。でもね、そのコミュニティマスターの石川善樹は、「ちょっと今から発送業務のシール貼りやってもらっていいですか」みたいな感じでやるんですよ。ほんで、ここは下手するとシール貼っているのだけど、シール貼りながら話している話が本質的みたいな。

小沼:いや、これね、実はめちゃくちゃこの本に書いてあることなんですよ。何かっていうと、シュムーザーマッハーっていうのが世の中にはいるって言っている。シュムーザーってコミュニティをつくるうえで無駄話をひたすらしている人で、マッハーっていうのは目的のもとに集まって成果を出そうとする人。実はコミュニティにめちゃくちゃ寄与しているのはシュムーザーであって、マッハー的なことをやるとコミュニティはどんどん壊れていくってことを言われている。

:僕ね、マッハー寄りなのですよ。成果を出したがったり、目的合理的に何かやろうとするところがあって、なんか孤独なボウリングやパットナムに否定された感じ(笑)。マッハーがいらないわけじゃないのだけど、シュムージング、シュムーザーとのバランスがすごく大事だっていうのは非常に面白くて。


小沼:一方で、世の中で起きていることが逆のような感じがすごくしている。2日前ぐらいに日経新聞で一面に載っていましたけど、いまPTAがどんどん解散しているって話があります。何をやっているかと言うと、PTAの代行会社がPTAの付加価値の低そうな活動、例えば切手貼りとか交通整理とかそういったものを業者が代行し、効率が高い部分だけをPTAの人がやれるようにしている。旅行会社がそういったところをどんどんビジネス化しているって話があって、これも今の話からするとマジでやばい話が展開している。本当に逆ですよね。

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