【イベントレポート】<スペシャルトークイベント>佐渡島庸平×小沼大地×呉哲煥 コミュニティを語る 〜活気あるコミュニティであふれた未来とは〜

■改めてコミュニティにはどんな価値や可能性があるのか?
■これからのコミュニティはどうなっていくのだろうか?
■私たちはコミュニティとどうつきあって人生を豊かにしていくのだろうか?

コミュニティに熱く深い想いを持つ株式会社コルクの佐渡島庸平氏と、NPO法人クロスフィールズの小沼大地氏をゲストにお招きし、コミュニティ論を熱く語り尽くした「佐渡島庸平×小沼大地×呉哲煥 コミュニティを語る」の様子を、特別にレポートでお届けします!モデレーターはNPO法人CRファクトリー代表理事の呉哲煥が務めました。

(記事協力:高橋麻美さん、北本若葉さん、木村聡子さん、内原英理子さん)


:今日はコミュニティを語るというテーマで、コルクの佐渡島庸平さんと、クロスフィールズの小沼大地さん、CRファクトリー呉の3人でお送りしていきたいと思いますので、ぜひ楽しんでいただければと思います。

佐渡島:コルクの佐渡島です。今日の会場には13時に来たんですけど、ずっと一人でブログ書いてて、事前にほぼ一言もしゃべらずにいきなり本番なのでよろしくお願いします(笑)。

小沼:はい、NPO法人クロスフィールズの小沼です。今の佐渡島さんのその影響により、まだこれから何が行われるかっていうのが分かっていないんですけれども、このメンバーであれば絶対面白い話になるだろうと思ってすごく楽しみにしております。どうぞよろしくお願いします。

:私がNPO法人CRファクトリー代表の呉と申します。佐渡島さんとのご縁は、私が出した『コミュニティマネジメントの教科書』という本を佐渡島さんが買ってくれたこと。ある日購入者リストに「佐渡島庸平」って書いてあって、ビビッて(笑)。そこからのご縁で一緒にイベントやりたいということで今日お引き受けいただきました。小沼さんとはもう端折りますけど(笑)長い付き合いということで、学生時代の時に初めて出会ってからの付き合いなのでもう10年来くらいですかね。

コミュニティとつながりが豊かな社会をつくりたい

:私たちCRファクトリーが実現したい社会と言うのは、自分が自分らしくいられる居場所があって、楽しくて、ホッとできて、心が元気になるような居場所があること。一緒に人生を楽しんでいける仲間・つながりがあって、何かあった時に頼れたり助けを求められる居場所、仲間・つながりがある。

そんな居場所や仲間やつながりがあるから人生が充実する、生きることへの前向きな気持ちが湧いてくる、明日が楽しみになる。みたいなことが私たちはすごくあるなというふうに思っていて、それが自分自身の原体験とかコミュニティ体験としてすごくあったので、やっぱりそれがすごく価値が高いと思うと共に、今の日本の社会にとって大切なことだなというふうに考えています。

そういう居場所や仲間やつながりがあった時に、孤立や息苦しさ、生きづらさって減るんじゃないかなと。ちょっと大きな話にもなるんだけども、争いや対立が減っていくこと、暴力や虐待や排除が減るんじゃないかと。大きく考えるとそういうことを感じていて、世界平和とかいうと大きいんですけども、その足下の家族とか仲間とか職場も含めたそういう関係性やつながり、コミュニティというところにやっぱり非常に大切なことがあるというのが、私が軸として考えているものの大きなものの一つになっています。

わずらわしさからの”解放”、セーフティネットの”剥奪”

:コミュニティが必要な理由というのをちょっと堅苦しく話したいと思います。堅苦しく話すって予告するのもあれですけどね(笑)。平成30年間で起きた構造変化みたいな話をすると、バブル崩壊からの30年間はやはりデータ的にみても日本社会がつながりやコミュニティを希薄化・弱体化させてきた歴史だと言えると思います。

それは分かりやすいところで言うと、家族・親族だったりとか、あるいは、会社・職場だったりとか、あるいは地域・隣近所ですね。こういう血縁、社縁、地縁というコミュニティを希薄化・弱体化させてきた歴史があるということですね。結論から申し上げると、やっぱり親戚関係が希薄化し、職場関係が希薄化し、地域関係が希薄化したっていうことが1973年から2013年、この40年間のデータでも確認できるということですね。

生涯未婚率(50歳時未婚率)については、1980年は男性の98%が婚姻状態で結婚していたというところから、今はだいたい25%というところまで来ているので、男性の4人に1人は未婚ということになっています。良い悪いは置いておいて、そういうことが構造的には起きているということですね。

それと関連するところで言うと単身世帯率。独身・一人暮らしという世帯数が、平成2年は23%くらいだったんですが、平成27年くらいまで来ると34.5%というところで、いま最も多い家族類型は単独世帯・単身世帯となっている。

従来あった血縁・地縁・社縁みたいなものが縮小していっている。生涯未婚率は上がっている。単身世帯は増えている。というのが今の日本社会の基盤にある構造だということですね。

これは二つの意味があって、早稲田大学石田光規先生の解説によると、これは【わずらわしさからの解放】であり、地方から都会へ行くこと、親戚づきあいをできるだけ避けること、職場の凝集的な付き合いから避けるという解放であると同時に、何かあった時の頼みの綱、【安心安全のセーフティネットの剥奪】でもあるということ。自由で選択的なものを求めて来た結果、孤立・孤独・分散した構造になっているということで、好む好まざるとに関わらずそういう状態になっているということになります。

ということで、現代になって何が起きているかというと、家族・会社・地域の在り方が変化して、つながりが希薄化して、コミュニティも弱体化して、個人が孤立しやすいという構造になったということです。それをふまえてこの後小沼さんや佐渡島さんのお話に入れたらなと思っています。

どこか一つでも良いから、自分の居場所と思える場所=「私のコミュニティ」と思えるものがあったら、生きていく理由になる

:一方で、この後で小沼さんの話にも出てくるかもしれませんけれども、ソーシャルキャピタルという研究の中でつながりやコミュニティは様々な効果・効用があるということも科学的にだんだんわかってきているということがあります。日本社会は先ほど言った通り、与えられるコミュニティがなくなって、自由で、わずらわしさから解放される一方でつながり・コミュニティを失ってきている。でもつながり・コミュニティは実は健康に良かったり、幸福に効果があったり、教育にもプラスになるということもあった。


:私たちは一つのコミュニティだけじゃなくて、家族とか職場とかサークルとか、大学時代の友人とかいろんなコミュニティに囲まれています。つながりもたくさんあります。家族は3500万世帯あって、職場は420万社、6400万人という就業人口がいて、学校は小中高で4万校、1600万人が学校というコミュニティに所属しています。NPOというものもあって、法人格かどうかをおいておくと100万団体くらいあるということですね。

ここですごく私がお話したいのが、やっぱりどこか一つでも良いから、自分の居場所と思える場所、「私のコミュニティ」と思えるものが人生の中で1個でいいからあったら、それは大げさだけど生きていく理由になるくらい大きな力が居場所やコミュニティにはあると思う。

あとは仲間・つながり・良き関係っていうのは本当に生きやすさをつくってくれるものなので大切だと思っています。「つながり」と「コミュニティ」は人生の基盤であり、健康で幸福な生活につながり、そして豊かに生きる権利の保障になると思っています。経済と医療は大事だし、電気・ガス・水道ももちろん大事なんですけど、加えて主張したいのが、「つながり」と「コミュニティ」というものを自分の人生にどうやってつくっていくのかが大事だと思います。

:電気・ガス・水道を社会的に保証していくのが大事だというのと同じで、「コミュニティ」と「つながり」というものを社会環境としてどう保証していくのかということも大事なんじゃないかなと思います。生きる権利とか憲法で言う生存権に関わるくらい「コミュニティ」と「つながり」って大事だなと思うので、今日は小沼さんと佐渡島さんと一緒だということもあって、居場所・つながり大事だよねっていうところは少し厚めに話したいなと思いました。

最後は軽くこの後の話のキーワードとして【StrongTies】と【WeakTies】について話をしておきます。【StrongTies=安心と信頼の強いつながり】、【WeakTies=気軽さと学びのゆるやかなつながり】。どちらもすごく大事。どっちがいいという話ではなくて、両方あると良いなと思っている。何かあった時に頼れるStrongTiesも大事だし、StrongTiesだけでは息苦しくなることもあるのでWeakTiesも大事だよね、と。

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