【イベントレポート】<スペシャルトークイベント>佐渡島庸平×小沼大地×呉哲煥 コミュニティを語る 〜活気あるコミュニティであふれた未来とは〜

(4/4ページ)

家族がホーム的にあったら、あとはそんなに安定していない居場所が複数あればいいんだと思う

小沼:DAO、Web3ってものと今のがどう紐づくかっていうのがすごいテーマで、佐渡島さんがどう思われているか。資本主義社会が認めている通貨だと、それが対価(等価交換)になって、スパンスパンと終わるものの、DAOだとコミュニティの中だけで共有されている価値での対価交換をトークンでやっていくっていう世界観。今、佐渡島さんが言った交換の原理で言うとつまらないものなのか、ダメなものなのか、どう考えてます?

佐渡島:今はほとんどのDAOが、株式的な感じで、将来これが資産的にもなるというところでみんなが参加している。今は参加者も少ないし、すごい何百倍にもなるんじゃないかという投機的目的の人たちが集まっているコミュニティなので、ほとんど意味がないと僕は思っている。

で、人生で何が価値があるのかって、例えば今こういう風にしゃべってて、これはいい会話の機会だなって思って、いろんな質問もしてくれたりだとか、それによって僕もあまり言語化したことがないことを考えたりっていうことがあったりだとか、お互い楽しいと思うわけじゃないですか。

で、この楽しいと思う具合が一緒である、というこの感情の交換こそが、なんというかな、生きている意味があるつながりだと僕は思うんです。愛情とか恋人っていうのは愛情の交換量がいいのであって、プレゼントの金額の値段が一緒であればいい恋人っていうわけではない。

佐渡島:コミュニティ運営でも熱量高くすると下がっていくだけ。晴れの日はそのあと曇ることになっちゃうし。で、どうやって曇りぐらいの感じにずーっとしておくかっていうのが重要。

多分、居場所って言ったときには、家族がホーム的にあったら、あとはそんなに安定していない居場所が(入れ替わっていく居場所が)複数あればいいんだと思う。昔は家族っていうものが核家族じゃなくて、三世代ある家族っていうところだったので、不完全な親であっても補完し合うっていうかたちで、家族の縁というのがホームになり得たんだと思うんですけども、今は親も苦しいし、子どもも苦しい。

核家族の中の理想が、メディアの中で氾濫していて、でも実際そういう風な家族を持てている人っていうのはほとんどいなくて。全員が、全員っていうか、9割とかの人が自分はホームを失敗しているみたいな、不完全であるみたいな、何らかの負けているみたいな感覚を持っていて。どこかを(家族を)ホームとして安定させられていて、あとは不安定な居場所があるっていうのが、多分、昔の社会はもう少しそういう社会だったのではないか。

小沼:そうですね。宮台真司さんていう社会学者の方もその話をしている。いま社会の底が抜けちゃっているというふうに表現してたりするんですけど、彼は斜めの関係が地域にあるのがすごく大事だって言っていて。

家族の中だと、昔も家族の中は崩壊しているケースはまあまああった、と。いま価値観がメディアの価値観と親からの価値観というところしか世代的に享受されなくなってきていて、それだと子ども側が価値観のものさしをそこしか持てずに苦しい。一方で地域の中に、いろんな多層的にコミュニティがあるって、さっき呉さんが言っていたものがあるっていうことが結構大事なのかなって。

で、シリアにも明確にあるんですね。やっぱり。下手するとコーランに書いてあるレベルでそこがデザインされているような感じが。困った人がいたら助ける、ということが行動原理に完全に書かれているっていう感じがあって、これだと最低の貧困は起きないようにデザインされている、みたいなところがある。

もっと居心地が良い場所に偶発的にどう巡り逢うか

小沼:居場所の価値っていま、いろんなかたちであるって言われてまして、政府がやっている孤独・孤立の官民連携プラットフォームというのがあるんですけど、そのなかで孤独・孤立の課題が整理されていて、孤独・孤立の対応って大きくは2つあるというふうに言われている。

一つは、何か問題があったときにそれに対してなんとかする。助ける場所をつくってそこに連れてくる、みたいなこと。それはそれで大事な機能であると思う。ただ、それよりもいま大事だと言われ始めているのは、もう少し予防するような居場所があるっていうこと。ここは先ほどから話されている、もっと居心地が良い場所に偶発的にどう巡り逢うかみたいなところなので、おそらく今、世の中で言われている居場所だとか、なんか目的が違うものが混在しているようなところがあるのかなというふうに感じたりしています。

個人が自分に合った活動とか、居場所、つながりを探し、見つけ、参加する力が大事だなというのもすごく思うのと、あとはいま佐渡島さんが言った縁とか縁起っていうところで偶発的な縁を持ちながら、なんかそこでつながりとか体験が生まれて、それはまた固定的じゃなくて、どちらかというと流動的であるというやっぱりそこもすごくあると思う。で、最後に今、小沼さんが言った居場所という社会環境的に用意されている状態みたいなこともきっとあって、その混ぜ合わせなんだろうなと思う。

個人的には15年間コミュニティ支援をしてきた自分の系譜・流れからすると、やっぱり社会環境を整えたくなるという考えを私はまあまあ強く根っこに持っていて、私も大学時代にたまたま出会ったことによって、何かいろんな偶発が生まれているので、なんかその偶発によっていい意味で巻き込まれるだけの居場所のような、社会環境があふれるところをつくりたいなと思いますね。

:コミュニティがなぜ大事なのか、今後コミュニティがどういうふうに社会の中で大事になっていくのかみたいなことは、ますますさらにこれからより深めていって、それを少し世の中に発信していったり、何かヒントになる存在に、ますますなっていきたいなということをすごく思いました。

小沼さんからも過分なお褒めの言葉もいただきながら、なんかそれを力に、CRファクトリーとか私自身が次の5年も10年も、下手すると20年も、やっぱりコミュニティ一筋でそこでしっかりと世の中と対話しながら価値を放っていける存在になっていきたいなというのを今一番思っているところですかね。はい。

小沼:いや、なんか贅沢な時間でめちゃくちゃ楽しかったです。個人的には価値観がすごく移行しているってところで、なんかこう僕の中では客観から主観みたいなのがあったんですけど、今日一番刺さったのは、「しっかり」から「なめらか」っていうそこの移行というか、ゆらぎがあるんだなっていう気がしました。

NPOの立場に引きつけると、NPOの予算の考え方とか、最後PL(損益計算書)の一番いい状態は「ぴったり」なんですよ。これがNPOをつまらなくしている可能性はあるなと改めて思ったり。いかにしてなめらかな活動をNPOがしていくのか、というのが社会とのつながりとかコミュニティが発展していくうえではすごく大事なんじゃないかなと。

呉さんがいかになめらかになっていくか(笑)。ただ、僕は「しっかり」がその中にあることも絶対大事だと思ってるので、最初に呉さんが言っていたハイブリッドだと思う。いろんなものが両方ともあるけど、なめらかなものがNPOには足りないって今日の会話の中ですごく思ったので、もう一段なめらかになりたいなって思いました。

佐渡島:コミュニティを越境していくこと。つまり、遠くのコミュニティに行ったりすると、価値ってむちゃくちゃ相対的で、この価値は、なんかマナーとして一緒にするとか、揃えるとかってだけで良くて、正義じゃないんだなっていうふうに思えるようになる。結構多くの人がそのコミュニティの価値を破っているだけ、価値観がずれているだけなのに、自分が正義じゃない、正しくないってことで苦しんじゃってるんだろうなって。生きづらさを感じているんだろうなというふうに思って。

どういうふうにして価値っていうものが大したことがないことなのかというか、価値あることをしなくていいというか。人間は誰も価値が等しくあるとも言えるんですけど、等しくないとも言えて。ただただ、だらだら生きてたって十分。基本的には全員死ぬし、どんな人のやってることも1万年後は誰も覚えてないし、多分10年後も誰も覚えてない、ってすごい思うんですよね。ていう風にコミュニティについては思っています。



★イベントの模様はダイジェスト動画でもご覧いただけます!
(CRファクトリー公式YouTube)

登壇者紹介

佐渡島庸平さん
1979年生まれ。東京大学卒業後、講談社を経て、2012年株式会社コルクを創業。「物語の力で、一人一人の世界を変える」をミッションとするクリエイター・エージェンシーとして、作品編集や制作進行管理、新人マンガ家の発掘・育成、ファンコミュニティの形成・運営などをおこなう。講談社時代に『ドラゴン桜』(三田紀房)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの連載を立ち上げ、現在もエージェント契約を結ぶ。

小沼大地さん
NPO法人クロスフィールズ 共同創業者・代表理事
青年海外協力隊としてシリアで活動した後、2008年マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2011年5月NPO法人クロスフィールズ創業。ビジネスパーソンが新興国で社会課題解決に取り組む「留職」など様々な事業を展開。2011年に世界経済フォーラム(ダボス会議)のGlobal Shaper、2016年にハーバード・ビジネス・レビュー「未来をつくるU-40経営者20人」に選出される。国際協力NGOセンター(JANIC)および新公益連盟の理事も務める。著書『働く意義の見つけ方―仕事を「志事」にする流儀』(ダイヤモンド社)がある。一橋大学社会学部・同大学院社会学研究科修了。

呉 哲煥
NPO法人CRファクトリー代表理事
「すべての人が居場所と仲間を持って心豊かに生きる社会」の実現をビジョンに、NPO・市民活動・サークル向けのマネジメント支援サービスを多数提供。セミナー・イベントの参加者は8000名を超え、毎年多くの団体の個別運営相談にのっている。コミュニティマネジメント塾主宰。コミュニティキャピタル研究会共同代表。一般社団法人幸せなコミュニティとつながり実践研究所共同代表理事。血縁・地縁・社縁などコミュニティとつながりが希薄化した現代日本社会に対して、新しいコミュニティのあり方を研究し、挑戦を続けている。

シェアする

フォローする