【著者インタビュー】コミュニティ運営の答えがこの一冊に 頑張るリーダーたちの気持ちに寄り添う処方箋

2020年3月に出版した「コミュニティマネジメントの教科書」(以下、「教科書」と言います)は、NPO・市民活動・サークル活動などのコミュニティを運営するみなさんが組織運営に悩んだとき、その答えが見つかる一冊であり、頑張るリーダーたちの気持ちにも寄り添ってくれる処方箋です。

楽しく活動しながら、あたたかいコミュニティやつながりをつくっていくためには、どのようなことを知り、実践していけば良いのか?

今回は、著者であり、弊団体代表の呉哲煥(ご てつあき)に、教科書の特徴や、非営利組織の運営に特有の難しさやその運営のコツについて聞いてみました!

Q.教科書の特徴を教えてください。

この教科書の特徴は主に、
① 現場で発見し培ったコミュニティ運営に共通する課題や解決策
② 大学との共同研究による学術的な裏付け
③ 頑張っているリーダーに対するエール
この3つが挙げられます。

①現場で発見し培ったコミュニティ運営に共通する課題や解決策

2001年に独立・起業し、2005年にCRファクトリーを設立して以来、NPO・市民活動・サークルなど非営利組織の運営を支援する活動を続けてきました。セミナー・イベントの参加者は8,000名を超え、支援した非営利組織の活動分野も教育・自然環境・医療・福祉・スポーツ・音楽など多岐にわたります。15年間ほぼ全国各地を巡って、さまざまな分野・規模の非営利組織にセミナーやコンサルティングをする中で培ってきた知見・経験値をもとに、非営利組織に共通する課題やその実践的な解決策を提示している実学書であるというのが1つ目の特徴です。

②大学との共同研究による学術的な裏付け

CRファクトリーは、2013年から7年間にわたって上智大学と共同研究を進めています。「良いコミュニティ」の要素とは一体何なのか? という問いに向き合う中で、「良いコミュニティ」かどうかを知るための物差し(「コミュニティキャピタル診断」といいます。誰でも受けられるのでぜひ試してみてください)を開発することができました。教科書では第2章で詳しくご紹介しています。現場で得られた知見だけでなく、学術的な裏付けを持って非営利組織の運営について書かれているというのが教科書の2つ目の特徴です。

③頑張っているリーダーに対するエール

何かやりたいことがあって、思いや志があって、団体を立ち上げて最初は上手くいっていたのに、だんだん上手くいかなくなってきたりする。皆を巻き込むのが難しくて人が集まらなくなってきたり、組織運営が難しくて悩んでしまったり、いつの間にか活動が頓挫してしまう・・・というリーダーに、たくさん出会ってきました。コミュニティの運営には特有の構造的な難しさがあって、組織運営が上手くいかないのはリーダーの頑張りが足りないせいではないんです。そういう既に十分頑張っているリーダーたちに、「がんばってるよ」「そもそも難しいことをしているんだよ」「粘り強くやっていこう」とそっと隣に座って今までの頑張りを労い、その背中をポンと押すようなエールが、教科書には込められています。

Q.コミュニティ運営に共通する特有の難しさとは何ですか?

15年間、NPO・市民活動・サークルなど非営利組織の運営を支援する活動を続ける中で繰り返し耳にしてきたのは、

活動を始めて最初は楽しくて上手くいっていたけれど、だんだんとミーティングに人が集まらなくなった、受け身なひとが多くメンバーがお客さんのようになってしまっている、期限までにタスクをやってきてくれない、連絡をしても返事がなかなか来ない、団体内の行事に参加するひとが減っている、イベントの際の手伝いにも来てくれなくなった……。

といった非営利組織の運営に悩むみなさんの声でした。

非営利組織の運営がなぜ難しいのかというと、それは端的に言うと「多様性」と「温度差」によるものです。非営利組織やコミュニティは、その活動や理念に共感するいろいろな人たちが関わるところに特徴があります。そうするとそこに温度差が生じるのはある意味当然の結果ともいえます。非営利組織の運営には、給料や契約といった目に見える報酬で結びついた企業組織などの運営とは異なる、非営利組織特有の難しさがあるのです。

何か思いや志をもって団体を立ち上げたり、運営したりする中で難しさを感じているみなさんに、まずは「そもそも難しいことをやっているんだ」「温度差や多様性が広がりやすい構造なんだ」ということを知ってもらいたいと思っています。

Q.非営利組織の運営にはコツがあるのでしょうか?

はい。非営利組織の運営が難しいからと言って、何にも打ち手がないかというとそんなことはありません。ちゃんとコツがあります。きちんと手をかけていくことで、成果も出しながらあたたかく居心地の良い団体にしていくことは可能です。

非営利組織を運営していくためのポイントとして、
① 主体性・コミットメントを高めるマネジメント
② 愛着・関係性を良くしていくためのマネジメント
③ 多様な関わり方のデザイン
という3つがあげられます。

①主体性・コミットメントを高めるマネジメント

非営利組織のリーダーやそのコミュニティ自身に、メンバーの主体性・コミットメント・優先順位を上げる力があれば、コミュニティーはとても良くなります。逆に言えば、主体性・コミットメントがとりつけられずに皆もがいています。主体性を高め、メンバーが団体のことを「自分ごと」だと感じられるようになるためのミーティングのやり方、コミュニケーションの取り方などの具体的な方法については、教科書に詳しく記載しておきましたのでぜひ実践してみてください。

②愛着・関係性を良くしていくためのマネジメント

コミュニティのメンバーとともに楽しい時間を過ごせた、あたたかく受け入れられた、勇気づけられた、励まされた、認めてもらえたというような経験が積み重なっていくことで、「このコミュニティが好きだ」「この人たちのためなら頑張りたい」という愛着や関係性が育まれていき、それによってメンバーの熱量が上がり活動に活気が出てきます。愛着と関係性が育まれることは、長い目で見ると主体性やコミットメントを高めるということにもつながっていきます。
効率的に、スピーディーに物事を進めたいと思う気持ちも分かります。ですが、お金という動機で関わっているわけではないボランタリーな組織では、より「ひとの気持ち」という部分に目を向けて、愛着やメンバー間の関係性を育んでいくことが、結果的には活気あるコミュニティの実現につながります。

③多様な関わり方のデザイン

主体性・コミットメントや愛着・関係性を高める努力はしながらも、同時に多様な関わり方を受け入れていくということもすごく大事です。多様性や温度差を縮めていくと同時に認めていく。それは例えば、月に1度ちょっとだけ関わるとか、ミーティングに参加しないという関わり方も、ある程度は受け入れて認めていくということです。給料や契約によって結びついていないボランタリーな組織だからこそ、関わり方の濃さは人それぞれあり得るし、1人の人の中でもその時々で団体に対する気持ちや優先順位は変化することがあるということを念頭に置いて、多様な関わり方を用意することが大切です。

Q.教科書を通して一番伝えたいことはなんですか?

教科書を通して一番伝えたいことは、良いコミュニティや良いつながり、仲間や居場所というものが私たちにとっていかに大事かということです。良いコミュニティや良い関係性に囲まれたとき、人生がすごく快適になったり、生きるモチベーションが湧いてきたり、生きやすくなったりするということがあります。今、日本社会に足りていないのはそこだという気がしていて、だからこそ良いコミュニティを増やしていきたいし、頑張っているリーダーたちにあきらめて欲しくない。

このことを一番伝えたかったけれど、「コミュニティは大事だ!」とただ声高に言うだけの書籍にはしたくなくて、「じゃあどうしたら良いの?」「どうやったら良いコミュニティってつくれるの?」となったときに、そのためのノウハウも書いてあって、困ったときにこれを読めば答えが見つかる一冊にしたいと思いました。非営利組織の運営はたしかに難しいですが、コツを知って実践することで確実にコミュニティの状態を良くしていくことはできます。
教科書を実践することで、ぜひ良いコミュニティを自分の足もとで増やしていって欲しいと思っています。

Q.教科書はどこで入手できますか?

CRファクトリーのホームページから購入頂けます。1冊2,000円(税込・送料別)です。

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Q.どんな人に読んで欲しいですか?

欲を言えば学校の授業で扱って欲しいと思うほど、どんな人にも読んで欲しいです。その中でもあえて挙げるとすれば、何かやりたいことがあってこれから団体を立ち上げたいと思っている人、既に団体を立ち上げたり、リーダーになったけれどいざ運営を始めてみるとなかなか難しいなと感じている人に読んでみて欲しいと思っています。コミュニティ運営は大変なことも多いけれど、その大変さを上回るだけの価値がコミュニティやつながりにはあると確信しています。

まとめ

長年、非営利組織の運営支援や研究に携わってきた著者。「運営が上手くいかないのは本人たちのせいではない。少しの知識やコツを知っていれば、コミュニティ運営はもっと楽しくなるはずだ」と感じていたそう。
頑張るリーダーの気持ちに寄り添い、現場の声と学術的な裏付けをもとに非営利組織の運営をサポートするCRファクトリーの今後の展開に乞うご期待!

(インタビュアー:櫻井 由美子さん)

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