コラム「生き心地の良い組織」

こんにちは、代表の呉です。
先日、「コミュニティキャピタル勉強会」というイベントで、岡檀さん著の『生き心地の良い町〜この自殺率の低さには理由がある〜』について取り上げました。

徳島県海部町(元海部町)という「地域」についてのお話ですが、地域のみならず「組織」(企業・NPO)にも応用できるヒントが満載でとてもおもしろかったです。

海部町は全国でも自殺率が8番目に低く、さらに言うと自殺率が低い上位10市区町村の残りの9つがすべて「島」であることを考えると(「島」という特殊な地勢を除外すれば)、日本で最も自殺率の低い町と言っても過言ではありません。
そんな海部町が保有している(と岡さんが分析した)5つの自殺予防因子は以下の5つです。

【5つの自殺予防因子】
1.いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
2.人物本位主義をつらぬく
3.どうせ自分なんて、と考えない
4.「病」は市に出せ
5.ゆるやかにつながる

その中でも特に1と3と4は自分にとってとても示唆に富んでいましたね。

1は簡単に言うと「多様性」の話です。「いろんな人がいてもよい」という守りの多様性から「いろんな人がいたほうがよい」という攻めの多様性、多様性への積極性。しかも、それは「多様な人を受け入れよう」という道徳的スローガンではなく、自己利益にかなう生活の知恵なのだということがわかります。

3は「自己効力感」の話です。海部町の人たちは社会参加が盛んで、自分が「この町」や「この状況」を動かしているという感覚があります。自分たちの団体を省みるとき、うちのスタッフは「この団体を動かしているのは自分だ」「自分は欠かせない存在だ」という自己効力感を感じられているだろうか。ここはCRファクトリーの弱いところだと自覚しているので、重要な問いとしてこれからも向き合っていきたいです。

4は「悩みやストレスは出せ(相談しろ)」という話です。「援助希求」といい、家族のトラブルや事業の不振、その他生きていく上でのあらゆる問題を内側に抱えこみすぎず、相談したりさらけ出そうということ。これが海部町はとても上手らしく、何かあったら外に出すし(相談するし)、何かあった人に対して外に出させる(相談させる)。
この「助けを求める」という援助希求を「個人がした方がよいよ」、という話にとどまらず、コミュニティ側がいかにそれを促すかがポイントであることにも触れられています。
個人が「援助希求」をすることが難しいことをむしろ前提としながら、
「弱音を吐かせるリスク管理術」
「海部町コミュニティでは「態度」によって、弱音を吐いても大丈夫だよ、というメッセージを発信し続けてきた」
「海部町は、「助けを求めよ」と言葉によって人を諭すよりも、人が「助けを求めやすい」環境をつくることに腐心してきた」
と書かれている。
うちの組織でできてるかなぁ〜。ぐさっときました。

この本には「地域」や「組織」を考える上でのヒントがたくさんありました。
これらの因子を参考に、現場での応用・運用を試みてみたいと思います。

(代表 呉哲煥)

シェアする

フォローする