【スペシャル対談企画③】自分の”魂”が震える場所を取り戻そう(ゲスト/坂本 智子さん)

CRファクトリーが新たに推進する「コミュニティ活動力教育事業」は、ひとりひとりが自分に合ったコミュニティを見つけ、参加する力を育み、幸せに生きることをめざした取り組みです。

今回の対談では、特にミドルエイジ以降のコミュニティ参加の重要性とその価値について探っていきます。第3回は、オランダ在住・サープレ!プロジェクト発起人の坂本智子さんをゲストにお招きしました。(聞き手:CRファクトリー代表 呉 哲煥)

坂本 智子さん

組織開発コンサルティング会社を経て、夫の駐在勤務のためモスクワに帯同する中コミュニティと出会う。
これからの組織のヒントがコミュニティにあると感じ、「サープレ!〜自分らしさを取り戻し、可能性の窓を開き続ける『つながり』の場〜」をコミュニティMy3rdPlaceのメンバーとともに出版。
戦争起因で帰国後、組織開発・キャリアコンサルタントとしてiMi開業。様々な案件に携わる中再び夫の帯同でオランダへ。
複数のコミュニティ運営に関わり、オランダと日本にまたがり、現代社会の孤独・孤立・ウェルビーイングの社会課題に取り組む。

「みんな幸せになりたいんだ!」

ー 本日は貴重なお時間ありがとうございます!
早速ですが、坂本さんご自身は、コミュニティ活動(コミュ活)の必要性・重要性をどのように考えていらっしゃいますか。ぜひお考えをお聞かせください。

坂本さん: 私はコミュニティといったときに、自分の中の定義は結構サードプレイス(自宅や学校、職場でもない第3の場所)に近いというか…コミュニティって生活を共にしている、ファーストプレイスと繋がっている感覚も定義的にはあると思うんですけど、地域活動は”参加してもしなくてもいい”というものだと捉えたら、サードプレイスということに現時点ではなるのかな、と。

先日サードプレイスにまつわる本を出版したんですが、その活動を始めたきっかけとして、「なぜ人はサードプレイスで活動するのか?なぜこの現代にサードプレイスが大事なのか?」を自分に問い直してきていたんですね。
それでわかったのは、一番は「みんな幸せになりたいんだ!」ということです。

今の日本社会を見たときに、ウェルビーイング度が低いという状況がありますよね。なぜ日本人はこんなに物質的に豊かなのに、精神的な幸せ指数が低くなってしまうんだろう?と思ったときに、ハーバード大学80年研究で、「幸せは人間関係が大事」と答えが出ちゃった。人間関係なんだ!と。そしてそこがクリティカルに感じられてない状況が今の社会を作っていて、孤立孤独の問題を生み出しているのではないか?そこを取り戻していくために、サードプレイスってすごく大事だなと思ったんです。

究極を言うと、サードプレイスってあってもなくてもいいもので、家庭や職場で個々の人間関係が充実していたらいらないとも言えます。が、現実はなかなか難しいと感じている人が多くて、サードプレイスで「これが人間として大事だ!自分らしさや、自分の人生を生きるってこういうことなんだ!」というのを取り戻せたとき、ファースト・セカンドプレイスにも戻っていけるというのがあると思うんです。


サープレ!プロジェクトの出版記念イベントの様子

坂本さん: 石山恒貴先生ご登壇のイベントでもありましたが、企業の中でも心理的安全性、チーム作り、人的資本経営という文脈で、人間中心の経営(組織のための人ではなく、人のための組織)志向になりつつあると感じています。どうやって働きやすい職場をみんなで作っていくか?というのが職場の中でも語られ始めている。

そのスピード感もある一方で、コミュニティを軸にした社会の流れ(良い人間関係を浸透させていくこと)をどう作っていくか?も必要だと思っていて、両方アプローチしていくことが大事だと思っていますね。むしろコミュニティの方がそういう感覚を取り戻しやすい。最近キーワードと思っているのが『共同体感覚(自分が共同体の中で周りと繋がっている感覚)』。ウェルビーイング部会で対話する中で、幸せのキーはこの感覚にあると感じています。それを取り戻していく場がコミュニティではないかなと。

ー やっぱり”働く”ということ、資本主義・経済活動・労働の力学を突き詰めていくと、どんどん人間が手段化していって、生産性のあるなしで測られてしまったり、人間性より何ができるか?を職務経歴書などで見られたり…それが中心になってくればくるほど、人間が人間じゃなくなってくるような力学が働いたりします。その揺り戻しで、ヒューマニティ・人間中心という流れがきているのかなと。
坂本さんのおっしゃるように、人間関係大事という考えと、人間関係構築スキルはサードプレイス(コミュニティ)の方が取り戻しやすいというのはなるほど!と思いました。

坂本さん: 企業ってどうしても利潤を追求していくという、事業の継続性が目的というのは外せないですよね。
とはいえ、私は進化型組織の研究をしていたりするのですが、人間中心の経営を始めている企業はすでに世界にたくさんあります。その流れは確実に来ているし、どう地域社会と溶け合って良い社会を一緒に作っていけるか。ただ、パラダイム・既存の体質を変えるのは難しいというのはあります。だからコミュニティの存在って大事だなと思うんですね。

well-being=ありのままでいいんだ、という感覚を持てること。それが一番の効果かなと思います

ー なるほど!面白い。ありがとうございます!
それでは次の質問に移りまして、「コミュ活の効果・効用」について…コミュ活をするとどんな良いことがあると思いますか?坂本さんも実体験があると思いますし、何よりサープレの本を出す中で、いろんな方にインタビューもされてきたと思いますが…

坂本さん: コミュニティってまず「よく来たね!」というところから始まりますよね。(もちろん様々な形態のコミュニティがあるとは思いますが)誰が来てもいいですし、企業の採用のように条件があるというよりは、来てくれたことにありがたさ・感謝の気持ちがあったり、自分もここにいていいんだ、という。そこに役割や責任もないというか、まず”居る”ところからスタートする。言うなれば、子どもが生を受けて家族になる感覚に似ていて、赤ちゃんは何もできない状態でも、存在から得られるものがあるというような。そういう感覚を取り戻すというか、well-doingでなくwell-being=ありのままでいいんだ、という感覚を持てること。それが一番の効果かなと思います。

例えば女性は、女性活躍と言われる文脈で”いい母親でなければならない”という自分自身の像を作り上げていたりします。育児も仕事も!と。それは男性に至ってもそうで、3C(快適で理解しあえて協力的)という神のような(笑)仕事・家事・育児を担って気遣えるいいパパ像・いい男性像が作り上げられていって。誰もこうでなきゃいけないと言ってないのに、勝手に自分で縛られている。

コミュニティって、そういうところから解放されると思うんです。名刺に書いていない肩書き(役割)も社会人としてあるわけで、例えば”母親”とは名刺に書いていないけどある。でもその場だと、”ただの自分”であれる。そこから、「私は何を一番幸せとして大事にしてたんだっけ?」というのが言語化・イメージできてくると思うんですね。

ー ひとつひとつが深いですね…!まず”居る”だけじゃだめだ、とお互いに思ってしまう力学が仕事の現場では働きやすかったりしますけど、コミュニティではbeingの部分を温かく受け入れてもらえる。その感覚をどう個人が養うのか?もありますし、コミュニティ側も、新しいメンバーが入ってきたときに、何ができるかじゃなく共感して入ってきてくれただけで嬉しい、周りも居心地良くなってもらうために促しやコーディネートし出す、ということ自体に意味があるというか。まさに”居る”だけで周囲の人の生き方・在り方もプラスに働くというのがいいですね。

坂本さん: そうですね、そして地域ではそこに多様性が加わってきますね。ただ物理空間になるとどうしても気が合う同世代など、同質性が強調される印象があります。オンラインのコミュニティ、特に普遍性の高いテーマのコミュニティでは、30代の男性も、老年齢の方もいる。同年代もいればシニアの女性も、若い女性もいる。なんで一緒にいるんだろう?と思うこともあるけれど、でもこれってすごいことだなと思っています。普通に過ごしていたら会えなかった人と今会ってこんな話をしているということだけでも、コミュニティすごいな!と思いますね。

ー 確かにこの30-40年、多様で利害関係が強くないコミュニティ自体が、地域社会では弱くなっていますし、どうしても塾・習い事というような有償サービスに行ってしまう。多様な人たちとごちゃまぜで触れる機会が少ないのかもしれないですね。


My3rdPlace内のウェルビーイング部会の様子

「自己理解」は、環境に晒されることが大事。だから「自己開示」

ー 続いては「コミュニティ活動の中で必要な10個の力」についてこの中で、坂本さんが特にこれは重要だなと思うものがあれば教えていただけますか。

坂本さん「自己理解力」でしょうか。自分らしさって何だろう?とひとりでうんうん考えてても答えが出ない。自分らしさは人間関係の中で生まれてくるので、深まっていかないんです。私もキャリア迷子というか、自分探しをしていたことがあった。でも自分だけで探していても絶対見つからない(苦笑)。だから、Want、Can、Must、これらの観点を参考にいろんな人の考え方に触れ、対話を通じて深めていくことが大事だと思います。

そして「自己開示力」。これ大事だなと私は思いますね。「自己理解」は、環境に晒されることが大事というか。いい意味でも悪い意味でも、傷つくような経験もある意味必要だったりするかもしれない。

極端な例かもしれませんが、『令和の虎』という番組があるじゃないですか。あれを見ていると、矢面に立つって大事だなって。あの場に来なくてもいいわけなのに、なぜわざわざ否定されるようなところに来るのか?あれは企業アイデアに磨きにかけるためではありますけど、自分自身も、自分らしさとは何か?というところを人にあけっぴろげにフィードバックされることってなかなかないし、そうでないと自覚できない。やっぱり自分はこれをやりたいんだ、と。ある意味ああいうふうに環境に晒されることって大事だなと思いますね。

ただコミュニティ活動は優しい人が多いと思うので、あんまりこういう環境はなさそうですが(笑)。耳が痛いものは芯を食っている部分もあると思うんです。こういう体験をすることは大事じゃないかなと。だから「自己開示」ですね。

ー あえて「自己開示」しに行く、晒されに行くということですね。

坂本さん: いやほんと、心折れることもあります。例えば、私もネガティブとか自己否定まではいかないですが、「その活動ってどうなの?」というような否定的な意見をくださる人もいます。そのときに、ある意味活動のスピードなどを考えたら、その意見を聞かないというのもありだし、そう助言されることもあります。が、私はどうしても気になってしまって。それは多様性の観点で大事だと思っていて、盲目的に進めることもできるけれどどこか行き詰まることもあるだろうから、そういう意見がなぜなのかを理解して動くことが大事だと思って。だからあえて聞くようにしていて、傷つくこともあります(笑)。

ー 僕も数知れず言われてきました、コミュニティって何?わからないと(笑)

坂本さん: 呉さんもそのたびに譲れない何かを感じながら、あるいはこういう考え方もあるんだと軌道修正しながら、されてきたんじゃないかなと思うので、やはり「自己開示」大事ですね。

ー 自己開示も、認めてほしいと思って違うこと言われると傷も深くなるんですが、意図的に「晒されに行く」と傷も浅めというか、そこまで傷つかなくて済む。そのスイッチがまあまあ大事かもしれないですね。そして開示したことによって「私も実はそう思ってた」と共感してくれる人が現れたり、仲間が増えるということもありますからね。

「自分が幸せに感じる人間関係とは?」をポイントに

ー では、坂本さんのコミュ活ノウハウといいますか、これから始めたい人にアドバイスがあればぜひ教えてください!

坂本さん: いろんなコミュニティを浅く広く試してみることもありなのかなと思いますし、ここだなと思ったところと深く関わってみるということもいいかなと思います。”幸せって人間関係大事です”という話に戻るんですが、「自分が幸せに感じる人間関係とは?」をポイントに見つけていくのが大事かなと。

何が幸せと感じるか?をあるコミュニティのメンバーに聞いたら、「たわいのない話をしているときが一番幸せ!」という人もいますし、困っている人を助ける・役に立てることが幸せだったり、大いなる自然とつながりを感じて哲学的な学びを深めることが幸せ、という人もいる。人それぞれなので、何に幸せを感じるかを探っていくのが大事かなと思います。


オランダの高齢者施設でのボランティアの様子

坂本さん: コミュニティの関わり方を深めるということでもう1つ、コミュニティは最初入るときは”消費者”のように入ると思うんですね。そこにはすでに場があって、サービスを享受する立場として関わるのがスタートにあると思うんですが、そこに留まるだけだと全部が回っていかない。その中の人間関係で「居心地がいいな、幸せだな」と感じるとき、「この大事な場をどう守っていくか?大事な人たちが幸せに感じられるか?」ということに自然と意識が向けられてると思うんです。

そこに対して自分として何ができるか、無理をする必要はないですが、「こう貢献できるかも」と一歩踏み出すのが大事で。消費者で留まっているとコミュニティ自体も続いていかなかったりしますし、貢献していくことによって自分の幸福度も上がっていくと思うんです。先ほどの『共同体感覚』に繋がっていくところですね。

自分が生きていく中では、どうしても人間関係の中で生きていかなくてはいけない。その中で、自分の存在価値を感じるのはどういうときか?と考え、人と関わり、人のために何かをやることを通じて、その中に存在価値を感じる…そういうサイクルが大事で。
それを身近に実践できるのがコミュニティの良さだと思います。なので「まずやってみる」というのが大事かなと思いますね。例えば会計手伝ってみようとか、お茶を出してみようとか。そんな身近な一歩から始められることなのかなって。

ー なるほど!コミュニティの本質を突いている感じがしますね。自分なりの”コミュニティにおける幸せ”を感じていく。

坂本さん: 役割・責任から入るのではなく、まずは「ここが大事だ!この人たちが好きだ!」と思うから自然とこのコミュニティを守りたい・よくしたい気持ちが出てくるんだと思います。そこから行動して、感謝されてという循環が生まれると、つながりや幸せの実感に繋がるのではないでしょうか。

ー 好きになるプロセスって大事ですよね。だから貢献しようと思える。いきなり貢献から入るのではなく、まずは好きになれるもの・瞬間を自分から見つけにいく、というのはコミュニティに入っていくときにすごく大事だなと僕も思いますね。

みんな一人ひとり、記憶に残る”魂”が震える場があるのではないでしょうか

ー それでは最後に、これからコミュ活をする方々へぜひメッセージをお願いします!

坂本さん: 自分の”魂”が震える場所を取り戻そう、と伝えたいですね。
サープレも、「サードプレイスって何?」ってよく言われるんですよ。スタバ?みたいな(笑)。自分には関係ないというか、コミュニティについてピンときていない。でもよく聞いてみるとすでにあるんですよ。”魂”が震える場所ってどこなのかな、職場ならそれはそれでいい、自分が今属しているところにあるなら突き進めばいいけど、「あれ?どこだろう?」となっている人は、そういう場所を取り戻すのが大事ですね。

どこにヒントがあるかというと、原点は幼少期だったり学生時代だったりするかなと思います。私の場合は、大学時代にインドとフィリピンの教育支援NGOの活動をしていたんですが、そのときに分かち合いの場というのがあって、あの体験はすごかったなぁと。現地でスタディツアーをしているときに、見聞きしたあと最後みんなでシェアリング(感じたことを分かち合う)の場を持ったんですが、それが原体験としてあって。

みんな一人ひとり、記憶に残る”魂”が震える場があるのではないでしょうか。無理に開拓しなきゃとか、チャレンジしなきゃというわけでもないですが、どうしようもなく心が疲れたなというときは、そういう場を探してみてはどうでしょう?とアドバイスしたいです!

ー なるほど!みんな魂が震える場所を持ちたいだろうなと思いますし、刺さりますね。素敵なお話、本当にありがとうございました!!

「コミュニティ活動力」を深めたい方はぜひ!

【1月開講・参加者募集!】
“コミュ活”プログラム
「コミュニティライフシフト」
~人生のポートフォリオに「コミュニティ」を
(全5回/東京・田町&オンライン)

■日程[2024年]
Day1  1月20日(土)13:00-17:00 @リアル(東京・田町)
Day2  1月25日(木)20:00-22:30 @オンライン
Day3  2月 3日(土)13:00-17:00 @リアル(東京・田町)
Day4  2月22日(木)20:00-22:30 @オンライン
Day5  3月 2日(土)13:00-17:00 @リアル(東京・田町)

■リアルの会場
Day1、Day3、Day5:コミュニティスペースmingle(東京都・田町)
東京都港区芝4-7-1 西山ビル4階
アクセスはこちら

■定員
20名

■参加費
22,000円(今回のみの特別価格)

 詳細・お申込みはこちら

【お問い合わせ】
NPO法人CRファクトリー イベント事務局 event@crfactory.com

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